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新譜ジャーナル

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1974年に自由国民社から発行された音楽情報誌『新譜ジャーナル』の6月号です。定価は330円也。表紙は、加藤登紀子さんとのデュエット・シングル「灰色の瞳」を出したばかりの長谷川きよしさんと、ジャンジャンでのライブ盤『冬ざれた街』が好評を博している五輪真弓さん。表紙をめくるとエンケンさんの4月21日発売のシングル盤「踊ろよベイビー」の広告ですわ。
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【グラフ特集】は、新アルバム『TAEKO』完成真近のりりィさんが4ページ分、エンケンさんが2ページ、山口富士夫さんが1ページだけ、そして矢野顕子さんがリードボーカルを務めるニューグループ、ザリバの紹介が1ページ。
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いまだに謎のベールに包まれた日本ロック界のグレイテストバンド村八分。そのリードギタリストだった山口富士夫がソロアルバムを発表した。昨年のアルバム『村八分ライブ』ではその華麗なギタープレイを聞くことができたが、今度のアルバムにはフジオのトータルなミュージックが展開されている。ドラムス以外はすべて彼がやってのけたという。ひまつぶしという一風変わったアルバムタイトルの中身は時として熱く、時としてブルージーなサウンドで僕達の心を揺さぶる。
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ザリバという変わった名前のグループがデビューした。アフリカのスーダンにあるチーム・ワークが良くて平和な部落の名前で、事典を調べて見つけたという。このザリバ、1年半ほどクラブで歌っていたというから基礎がしっかりした、かなりのオールラウンドプレイヤー風だが、そうした力を総結集して歌いあげたのがデビュー曲「或る日」。女性ボーカルが心に浸みる。非常に新鮮な感覚で5月の空を思わすようなさわやかなハーモニーと雰囲気を持ち合わせている。5月1日トリオ・レコードからデビューで、TBSラジオの『ヤング・タウン』今月の歌に決まっているという。ダイアルを合わせてみたら。


【特別企画】はみだしソング傑作集、【今月の人】加川良さんの「男惚れした五人の仲間たちとの500人コンサートツアー」、【インタビュー】下田逸郎さんの「自分と他人とはお互いに解りあうことはできないという確認からの出発を」、いとうたかおさんの「はじめてのアルバムを出します」、友川かずきさんの「今はとてもハングリーなのです」などの後に、高田渡さんの連載エッセイ【高田渡の雑記帖】が載っておりますよ。

評論家とはヒョウバン家
(中村とうよう氏の評論に寄せて)

 わりかし永く続いたボクの雑記帖も一応今回で一区切りつける事になった。で、最後に一番ふさわしいネタをみつけたので、ここに紹介したいと思う。1974年3月4日付・オリジナル・コンフィデンスより『週間評論 日本フォークの成り行きは?(音楽評論家=中村とうよう)という氏の文章をとても楽しく読ませていただいた。これほど楽しく為になる文章はゼヒ新譜ジャーナル読者に・・・と思う。まず、その文章の出だしから始めたい。

アメリカから、ベテラン・フォーク歌手ジャック・エリオットがやってきて、その最終コンサートを読売ホールで聞いた。第1部は日本のフォーク・シンガーたち、高田渡、加川良、友部正人といった面々が次々に出てきて歌った。ぼくはこういった系統の歌手たちにすっかり興味を失っているので、なまの演奏を聞くことは、絶えてなかった。久しぶりに”日本のフォーク・ソング”なるものを聞かせてもらって、予期した以上のひどさに、あきれてしまった。

そんなに興味を失くしているのなら、聞かなければ良いのであって、大体あなたは日本のフォーク・ソングなるものを真剣に聞いた事があるのでしょうか?もし、そうでないというのなら「予期した以上のひどさに、あきれてしまった。」とはどういう事なのでしょうか。あの時のコンサートに出演した日本のフォーク・シンガー達は、ジャック・エリオット氏に好意を表すという意味でステージに出ていたし、ほとんどが1〜2曲だったと思う。たまに来て1〜2曲だけ聞いて何んという事をおっしゃるのでしょう。いくらあなたが高名な音楽評論家であっても許せる発言ではない。まあ、あなたは世界各国の音楽にも通じ、どうした訳か世界の民族音楽のレコードまでカンシュウされている方だからとても『耳』がこえていらっしゃるでしょうが・・。少なくとも音楽評論なるものでメシを喰っている方にしてはあまりにも軽率としか思えない。そして、またこんな事も語っておられる。

出てきた人たちの全員が、メロディ欠如、リズム欠如、ハーモニー稀薄で、歌詞だけがひとり歩きしているという、歌としては奇形児みたいなものばかりで、歌詞を重視するのならもっと言葉を生かすような歌い方をすべきで、わざと言葉の途中で切ったり、口ごもったような不明瞭な発音をしたりするのは、どういうつもりなのか。フレーズの尻を下げるような歌い方は、ディランから高石友也、岡林信康を経て延々と受けつがれているが、こういうふうに歌わないとフォーク・ソングじゃないという規則でもあるのかね?

歌として奇形児みたいなものばかり」とはよく言えたものだ。奇形児としてしか聞きとれないあなたの方がもっと奇形児である。あなたは一体あの時間何をしていたのだろう?それと、フレーズの尻を下げるような歌い方は誰から受けつがれたものではないし、そういうふうに(フレーズの尻を下げる歌い方)歌わないとフォーク・ソングじゃない!?なんて決めつけているのはあなただけだろう。

その肝腎の歌詞にしても、言葉のイメージのとらえ方はかなり画一的なように思える。

おまけにこんな事までおっしゃる。言葉のイメージのとらえ方が画一的なのはあなたの方ではないのだろうか。大体、1〜2曲しか聞かないで言葉のイメージもくそもない。あなたのような商売では何にでも決めつけてからでないと話ができないらしいから、しようがないといえばそれまでだが・・。「画一的」ではないものとは何んだろう?!改めて問いたい。しかもあなたはボク達に向かって「全体として、狭い狭い袋小路の奥に小さく体をこごめて身を寄せあっている退化した生物たちの群れを、うっかり見てしまったという感じで、正視するにたえられない哀れっぽい姿というのが、いつわらぬ感想である。」とまで言われる。正直いってあなたはよっぽど卑屈な方らしい。ボク達は狭い狭い袋小路なんかいないし、退化なんてしていない。あなたはボク達を細長い(横文字のつまった)筒を通してしか見ていない。自分を何様だと思っているのでしょうか?中村とうようさん!!正視するにたえられない哀れっぽい姿とは、こちらが言う言葉です。言葉遣いには気をつけて下さい。ボク達があなたの言う「退化した生物」なら、あなたは何んでしょう?

文章の中でとても新しい言葉を発見しました。「岡林ズ・チルドレン」こんな言葉を聞くのは初めてですし、こんなのあるんですかね?もし「岡林ズ・チルドレン」なる方がいらっしゃるのならゼヒ紹介していただきたい。しかもボク達のことを指して「岡林ズ・チルドレンのなれの果て」だって。この言葉を仲間達に話したら皆んな大笑いしてました。本当におかしい言葉ですね。言葉遣いにはくれぐれも気を付けて下さい。

ぼくもかって、日本のフォーク・ソングどうのこうのなんて旗振りをしたこともある手前、恥ずかしいというか責任を感じる。

なんてウソをつくんでしょう?!いつだってあなたは向こう岸でながめていただけでしょう。フォーク・ソングがブームのうちには適当にやり、ブームが去ればまたあっち、こっち・・じゃないですか。何が「責任を感じる」ですか?よくもまあシャア、シャアと言えるものだ。あなたは一連の評論家の中で一番何もやらなかった人だ。そのあなたが「こういうものが一定の支持者たちを持っているとしたら問題ではないか、と思って、日本のフォーク撲滅に立ち上がらなければ・・」もう、あきれて、あきれて・・絶句。日本のフォーク・ソング愛好者達よ!日本の音楽評論家(特に中村とうよう氏らの系統)達の撲滅に立ち上がろうではないか?などといきり立ってみてもどうせ何も出来ない彼ら、ただただ口ばっかしの音楽評論家達。ほうっておいてもどうせ命脈は風前の灯だという意見がとても多いので、無視しようと思っているのです。彼ら、特に中村とうよう氏らの系統の人々を見ていると民社党そのものを見ているようでとてもおもしろい。
 
 ちゃらんぽらんな彼らに幸あれ!!
 コウモリに似た彼らに幸あれ!!

その昔、竹中労氏が語った言葉を最後に彼らに贈って終りとする。

 「評論家とはヒョウバン家」!!!


【今月のシングル盤】コーナーのヒット曲予想がこれまた面白いんですわ。

今月の百枚の新譜から、ベストテン入りを狙える曲を選ぶとすれば、やはり1. 沢田研二「恋は邪魔もの」2. 加藤登紀子・長谷川きよし「灰色の瞳」3. フォーリーブス「ヘイベイビー」4. 郷ひろみ「花とみつばち」5. 城みちる「君はエンジェル」6. 南沙織「バラのかげり」7. ポピーズ「恋のチャンス」8. 海援隊「故郷未だ忘れ難く」9. 尾崎紀世彦「許しておくれ」10. 井上陽水「闇夜の国から」の10曲だろう。この中でも、人気、実力からいってやはり、沢田研二、郷ひろみ、南沙織、井上陽水が4強で、穴は今のりにのっている海援隊だろう。それにつけても、沢田研二はスタッフに恵まれているというか、やはり並みの玉ではなく、この「恋は邪魔もの」にしてもギンギンにのれる曲で、「これだ!」と思わず叫んでしまうほどよくできている。これでまた一歩確実に日本で最初のスーパースターの座へ近づいたようだ。また一方の旗頭、井上陽水の「闇夜の国から」も「夢の中へ」を彷彿させる代物で、陽水のあの哀しさが溢れ出している。海援隊も前作「母に捧げるバラード」とはうってかわって大真面目に歌っているが、さてどうか?シブいが、なかなかいいのは加藤登紀子と長谷川きよしがデュエットで歌っている「灰色の瞳」で、じっくり聞く分には申し分ない。

最後はエレックレコードからの生田敬太郎さんの5月10日発売のアルバム『風の架け橋』の広告ページ。
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by mokki_h | 2008-10-28 22:29 | 高田渡  

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