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ミュージック・ライフ 1973年7月号

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シンコーミュージック 定価300円

 ロック・ジェネレーションのための雑誌『ミュージック・ライフ』1973年7月号の「来日三大グループ、インタビュー集」には、ほぼ同時期に来日公演をしたベック・ボガート&アピス、ハンブル・パイ、テン・イヤーズ・アフターのコンサート・レポートとインタビュー記事が載っていますが、なかでも目玉となるのは表紙にもジャジャーンと登場のBB&A。ミュージック・ライフ 1973年7月号_b0100078_2027539.jpg1973年5月14日からの来日公演の様子をカラーと白黒の写真を使って紹介、そして、最初のうち、ベック先生はあんまり話をしなくて、ほとんどカーマイン・アピスのおしゃべりばかりで途中からなんとか話を聞けたというインタビュー。ロンドンでゴーイン・ダウンをやっていた時に「やあ、僕はドン・ニックス。その曲を書いたのは僕だよーん」と自己紹介されたのがドン・ニックスとの交流の始まり、とか、レッド・ツェッペリンでのジミー・ペイジのプレイはあんまり好きではないけど、ツェッペリンを離れてプレイする時は好き、とか、恋はみずいろをやったのはミッキー・モストがヒット間違いなしとかいって、そのまま言われる通りにギターを弾いただけ、もう最悪でしたわ、とか、ピーポーゲットレディみたいな曲が好き、とか、でも一番のお気に入りはスティービー・ワンダーなんですわ、とかいろいろ語っておられますが、それに続いての高中正義さんと石間秀機さんによるステージ評がとっても面白いのでまるっと引用させていただきます。

奇想天外なベックのギターにダウン/高中正義

 BB&Aの3人が登場する前に、ステージに並べられたPA・システムが先ず僕の目を捕えてしまいました。ツイーターが18、アンプが10、モニターが4といった具合に、大音響の中で演奏する際、最高に近い状態でプレイ出来るセッティングに只々、感心してしまった訳です。いよいよ、3人の登場。とても3人のプレイとは思えぬ音の幅、その豊かさにビックリです。全くスタイルは違いますが、現代のクリームが彼らなのかもしれません。ベックのギターはやはりブルーノート、基本的にはブルースを基盤にしているのはレコード同様明らかでしたが、なにしろメチャクチャ、とにかく奇想天外なフレーズが息つく間もなく飛び出してくるのです。彼には、キング・クリムゾンのロバート・フリップを除いた他のギタリストにはみられない独創的なフレーズのひらめきがあるのです。そして、何よりもベックというギタリストはとても恵まれていると思います。何故なら物凄いテクニックがある上、それ以上にそのテクニックを使いこなすフィーリング、そしてムードがあるからなのです。多くのギタリストに言えるのは、テクを磨けば、感情が仲々追いつかないということ。そんな問題点をベックは解決していました。そして最大の驚きはベックを含む3人のバランスのとれた力量です。そして、そのノリも実にファンキー。ベックのソウルへの憧れは有名でしたし、事実、彼はティムとカーマインのリズムにファンキーなノリを求めていましたが、ベックのギターはやはり、イギリスの音でしかなかったというのも面白い発見でした。しかし、彼は今後増々、ソウル特有のノリをうまく消化していきそうな気がします。コンサートがハード一辺倒の印象で、彼のギターの細やかな面が余り聞かれなかったのは心残りでしたが、同じギタリストとして、ベックはやはり、何をしでかすか分からない魅力あるスーパー・ギタリスト以外の何者でもなかったのでした。

もう一発出し切っていなかった底力/石間秀機

 何年か前の深夜放送で”ハートせつなく”という曲を耳にした時に、初めてベックの名前を知った。その曲の感じの良さに参ってしまったし、ベックのギターはそのすごい電気ショックを伝えてくれた。そしてこの曲は今だに忘れられない曲の1つになっている。あの何とも感じの良い、優しいそして力強い音は、今だにレコードを引き出して聞き入りたい程のものだ。ヤードバーズ時代から現在まで、多くのグループ活動を経て来ながらも、いつも、何か自分の一徹なものを残しているベックがこれからどんな風に進んで行くか、興味を引くかもしれない。先日、武道館でその演奏を聞いてみて、やはりベックのギター・テクニックには何かすごいものを感じた。さすがはベック、曲の乗り出し等は典型的なものだ。勝手な想像とイメージでステージを見たせいか、何かピントが合わなかったが、それもベックのせいじゃなく、自分の好みのせいだと知った。というのは、昔のベックにはもっと深みのある、あの力強い中にもやさしさを感じたのに、今度の生ではまったくそれが感じられなかった。もっと大きく包み込むものを期待して行った僕には残念でならなかった。あれもベックに違いないけどレコードで伝わってくるその良さが、何故生では無かったのか不思議だし、もしこのままのベックだったら、この後僕には何の魅力も伝わってこない。最近のレコードはあまり耳にしていないが、あの他の二人と一緒ではベックのベックたるものが消えてしまいそうだ。彼のやり方を自分の好みにあてはめて考えたらこんな具合に感じる。何か昔のことにこだわる様だけど、あの快いベックの音楽は何処へ行ってしまったのか、とてもはがゆい。やっぱりベックとて人間なのだから。ベックのあの独特のテクニックは、そして迫力は他に類のない素晴らしいものとしていつまでも残るだろうけれども、もっとゼイタクを言わせてもらえば、その奥にベックのあの快い感じをもっとはっきり表してくれたらどんなにすばらしいことか。ベックは変にサービス精神を出すことなど考えずに、自分の心からの表現で、多くの人にその魅力や暖かさを感じさせることの出来るプレイヤーのはずだ。表現の仕方は今の僕の好みではないけど、何かもっと底に力を持って一発出し切らないでいる様に思えてならない。ベックにギターの魅力を教えられた僕にとっては一寸もの足りなく思えたコンサートだった。JEFF BECKガンバレ!!
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by mokki_h | 2007-07-23 20:30 | ジェフ・ベック  

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