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別れの詩 メイン・テーマ

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DR1618 日本グラモフォン 400円
A面 別れの詩 メインテーマ  B面 白い海の想い出

 小川知子さん主演の東宝映画『別れの詩』(1971年)のオリジナル・サウンド・トラック盤です。A面は、物悲しくて美しいメロディーを持った、北野ひろしさんの作曲、小野崎孝輔さんの編曲による「別れの詩 メインテーマ」。B面は、穏やかでゆったりとした明るい曲調の「白い海の想い出」。小野崎孝輔さんの作・編曲。両面共に演奏はフィルム・シンフォニック・オーケストラ。
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ものがたり
 太平洋商事のタイピストである斉藤康子(小川知子)は、優しく思いやりのあるエリート官僚の山口伸夫(山口崇)との結婚を秋にひかえた婚約期間を送っていた。それは結婚生活と大差のない、誰の目から見ても理想的なカップルとして映る、平和で楽しい日々であった。一方、康子の同僚である岡島京子(藤田みどり)は、妻子ある男の福井(北村和夫)との激しい恋愛関係にあった。それは、康子と伸夫の安定した関係とは対照的な、せっぱつまったものだけに、康子には強く美しい愛に見えた。
 
 そんなある日、康子は学生時代に同じ大学で学生運動のリーダーであった安部(高橋長英)の自殺を知った。彼が死の場所として選んだ余呉湖は新緑の林に囲まれた静かな青い水をたたえる湖である。そして康子と安部が初めて愛しあった所。康子は安部の純粋さと若々しい情熱に魅せられ愛したのだが、彼が運動に挫折し、仲間を裏切った時、「卑怯者ッ!!」の声を彼に残して別れた。遺書の最後の行は”おれは卑怯者だッ!!”で結ばれていた。あれほど激しく愛しあい、信じあっていた京子と福井の関係が福井の妻の出現をきっかけに破局を迎えたのは、それからしばらく後だった。東京を去った京子からの手紙には、「とにかくあらゆるものは、茫漠たる彼方へ消えて逝く…では、あんなに愛しあっていた愛とは…この世にあるものは、ただ時の流れしか……」と、書いてあった。

別れの詩 メイン・テーマ_b0100078_203663.jpg このふたつの事件は、康子に男と女の愛についての疑問と不安を喚び起こした。”男と女が愛しあっているとしても、それは男の一部分に触れているに過ぎないのではないかしら”その気持ちを伸夫に訴えても、彼の何か虚無、若しくは、彼女が近づき得ない過去の残像のごときものが、康子を寄せつけないのだ。伸夫の過去。一枚の白い梅をバックにした水着姿の女性の写真。その女性、葉子(木内みどり)は伸夫を激しく求めたが、決して心をのぞかせない伸夫に絶望して自殺した。伸夫はこの事件を康子に語りながら、この青春も時の流れとともに薄れ消える過去だと言い切るのだった。康子はまるで息をとめて聞き入った。伸夫のアパートから駅のプラットフォームに辿り着いた康子に大きく激しくのしかかる、白い梅、伸夫と葉子の幻影に身体を揺らした康子は、走り込んできた電車の影に消えた。
 
 命はとりとめたものの病室で伏す康子に対する伸夫の優しい看護。しかし、康子の心は重かった。怪我が治った康子は、跛をひきながら伸夫のアパートに行き、いつものように食事をとり、狂わしいまでの激情で伸夫を求めた。翌朝、初めてアパートで夜を明かした康子は、伸夫の枕元に置手紙をして上野駅へとタクシーを急がせた。「東北のある高校で、英語の教師を求めております。さようなら、伸夫さん。今お別れするのは、あなたに私が本当の意味で再び会う、そのためにかも あなたが あなたのみが私の青春でした」


スタッフ
制作 田中収・馬場和夫
原作 柴田翔(文芸春秋社版)
脚本 橋本忍・岡田正代・橋本綾
監督 森谷司郎


キャスト
斉藤康子 小川知子
山口伸夫 山口崇
岡島京子 藤田みどり
葉子   木内みどり
安部弘  高橋長英

by mokki_h | 2007-07-07 20:40 | 小川知子  

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